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いちご100% 第165話 「旅立つまで」 

真中が決意の言葉を口にする。


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「西野。話があるんだ…」




『東城がくれた小説。それが俺の思いを走らせていて』




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「俺達の関係。…白紙に戻せないかな」



……凍った。



当時リアルタイムで読んでた時を思い出す。


いきなりこんな発言から始まるのか!?
そもそもこんな場所で言うセリフか!?



西野の表情が正視に耐え難い…。





カラオケボックスの外ではいまだに雪が降りやまず。

にぎやかなはずの店内でさえ静まり返ったかのようなの夜。

そして室内のモニターは次の曲さえ流さない、この『清算』な夜はまだ始まったばかりである…。





「…マフラー」
静寂の中、西野の呟きから始まる。


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「あれじゃ淳平くんの心はつなぎ止められなかったんだなって…」



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『これ。風邪ひいたらいけないから』
唐突な西野の言葉は真中をつなぎとめるはずであったアイテム。



同じ女の子として東城は、そのマフラーの意味に気付いていた。



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だからこそ外させないために、近くの店に入ることよりも「公園」を選んだ。
それが東城の優しさだった。



昨日。
真中の家の前で東城とあった瞬間に

『あ。もう。ダメなのかなって』
西野自身覚悟は決めていた。


そんな西野の勘違いをすばやく修正する真中。


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「きっかけは、東城が書いた小説。東城じゃなくて小説の方なんだ」



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「だから俺。真剣に映画の道、目指したいなって」
別れを決める原因を、ここにきて本気で、そして本音で話す真中。



皮肉な話だが、二人の関係を白紙に戻すということで
今まできちんと話してこれなかった真中の気持ちを話すことができたのである。


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高校受験のとき、泉坂高校に行きたい理由を話せなかった真中。
『映画作る人』になるという夢を語れなかった真中。

それは笑われるのが怖かったから。
西野のことをよく理解していないうえに
西野のイメージを勝手に自分で作り上げたがためにおきた間違い。

そのときから夢を語り合える東城に惹かれはじめていた真中。



だがここにきて初めてふたりは理解しあえた気がする。



西野のやさしさに甘えたら、甘えっぱなしになってしまう。
そんなんじゃ夢は叶わないと思うから…。


別れという選択肢を選ぶ。


西野が留学している間、俺も頑張ってみようと…。


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「その前にあたしが誰か他の男、見つけるかもしれないよ?」
「だとしても。…もう決めたから」


真中が夢の実現のために『進む』という不退転の決意。

映画に関して真中の妥協はない、それは昔から変わらない。


決めた事だから。
どんなことが起きても…。
どんなことになっても…。
それは自分が決めた事だから。


このなにげなく交わされた
セリフのやり取りにふたりの切なる想いが込められている。


それは西野にしても同じこと。
西野も自分の夢を持っている。
その実現のためには、たとえ反対されても反対を押し切るであろう…。


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「だけど。
 あたしがフランスに旅立つまでは、あたしは淳平くんの彼女だからね!」



こうして、2月14日にして、最悪の夜を回避した。


西野がフランスに旅立つまで、ふたりの関係は続くことになった。




これで
「実は…俺。
やっぱり東城のことが好きなんだ。」

などと言い出した日には、東城ファンだってキレた。
最低男。真中淳平の前途を祝して
派閥を越えてブラッディーバレンタインとなっていたであろう。





チョコ。オトナ味。


西野のいたずら。
バレンタインのチョコの中にひとつだけ入れられたものすごく苦いチョコレート。


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「にゃんらこれ…。にがっっ!!」

「大丈夫? あたし苦いチョコ甘くする方法知ってるよ」

「嘘! 教えて教えて」

「あのね…」





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キス。


ふたりのキスシーンは3度目。
しっかりと描かれるのはこれで2度目。

なにより今回のキスは西野から…。




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幻想的な西野ファーストキスシーン。
これがふたりの仲を決定付けた。



こんなことされれば甘くなりますって…!!



前話のラストひとコマから
こんなシーンが起きるなんて全然考えてなかったですよ。



考えれば考えるほど味なことをする女の子である。

そもそもこの苦いチョコレートをどんな想いで作ったのか?

本当に罰ゲーム的な意味で作ったのか。
それとも、キスを誘導するために計画して作ったのか。


そもそも真中に呼び出されたところから覚悟してたってことでいろんなことが考え出されてやまないです。




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「あ…」

真中に抱きすくめられて吐息を漏らす。

色気と離れた位置にいた女の子が
突然色気を出すとなんかこうエッチなんだよね。



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「…いつ行くんだ? いつまで会える?」
「…さ、3月2日…。卒業式が3月1日だか…ら…」


西野の声に、このエッチっぽい声に。
一瞬大事なこと忘れそうになった。



西野の出発日くらいチェックしとけ!!










「だからそれまで、あたしのこといっぱいいっぱい抱きしめて…」


最悪の夜となる悲劇を回避したふたり。


それからの15日間があまりにもあっけなく過ぎていってしまったがこれはこれでよかったのだろう。
きっと毎日ふたりは時間の許す限り会ったのであろう。

互いのてのひらに温もりや感触が染み込まれるまで
互いの身体が互いの違いをはっきりと認識するまで

そして、その匂い・その吐息が
身体全体に染み込むまで。
自分の記憶に刻み込まれるまで。

ずっとずっと、やさしい時間をすごしたのであろう。









そして、別離のときが来る…。

別れぎわを寂しいものにしたくない真中は空港で、はしゃいでいた。

見送りは真中ひとりだけだった。


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「両親やバイトの人たちは仕事あるから。
 友達も昨日卒業式のついでにお別れ会してくれたし…
 てゆーかホントは彼氏が来るから遠慮してって頼んだんだけどね」


この西野の表情が本当ににくらしいほどイイ表現ですわ。
おどけてみせてまで
この別れは永遠の別れではないということを強調するかのようである。


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「ありがとう淳平くん。キミに見送られて出発できること、本当に幸せだって思う」


正直。すてきだなと思いました。
正直。すごく潔いなと思いました。


このセリフは、迷いとか不安や不満があったら上手に言えません。


いままでいろんな西野の表情をこのプログでピックアップしてきましたが
こーゆーのかなりお気に入りな表情です。



フランスに着いたらもうふたりは彼氏でも彼女でもない。


この関係は白紙に…。解消される。


西野の口から出るのは…。寂しさと強がり。
「向こうに着いたら、もうあたし彼女じゃないから…」
「電話もしないし…」
「手紙も書かないし…」
「淳平くんのことも、なるべく考えないようにするから…」


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「動いちゃダメ!! 
 あたしも、もう振り向かないから、淳平くんもこのまま帰って!!」


ここでめずらしく西野が自分からビシッと切り出した。


もう数時間後にはフランスに行く機内の人となる。
真中の顔を見ていたら決意が揺らいでしまう。




これからはお互い

それぞれの未来に向けて頑張ろう…。



それぞれの未来に向かって。


ふたりの進む道は、別の方向へと向かっていく。
菓子職人になる夢。
映画監督になる夢。
それはいままでずっと考えて…とても真剣に選んだ道だから。



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だから『振り向かない』


これから先の未来は、夢の方だけを向いて歩いていく。


出会いと別れ。
どんな形であれ、それはいつか来るものである。


ずっと一緒にいて欲しいと願ってもいつかは別れのときがやって来る。


その理由もそれぞれである。


どんな者にも平等に出会いと別れは訪れる。


誰かと出会うという事は、同時に別れのはじまりでもある。



その別れの理由が永遠の別離…。『死』でないのであれば。

きっとふたたび、またどこかで出会う日が来る。



出会いは縁。


そして縁はたとえ切ろうとしても切れないものである。


『それにいつかまた会えるよ』


互いに成長したとき。

ふたりをつないだ運命が再びふたりを結び付けるかもしれない。


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だけど…。


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だけど。


もう一度だけ。


最後にもう一度だけ。



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…振り返る






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すぐ後ろに、真中。


このマヌケな間も
逆に物語を引き締めてしまうから
もうたまらない。




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最後の抱擁。

「会えるよね?
 またいつかあたしたち出会えるよね!?」


他人の目なんか気にしない。

運命はいたずらを起こすけれども、縁は自ら切っても切りきれないものなのである。


「そして次に会う時は
 もっとあたしのことワクワクさせてくれる淳平くんになっていてね!」




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「それじゃカンヌで待ってる!」

これはあきらかに未来への伏線ですよね!?

数年後。西野と淳平が再び出会う舞台は…フランス。

『いちご100% 第2部 ~フランス編~』がスタートするわけですよ!!


そして映画監督真中は、人種の坩堝フランスにて
さまざまな女性達と複雑な恋愛模様を繰り広げるんですよ…。


もーいいよ。
そんな真中なんて見たくないよ。




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旅立つ西野にはやはり笑顔でいて欲しい。

西野を載せた飛行機は日本を飛び立っていく…。







まさか前回の流れから、こんなにいい話につながって行くなんて誰もが予想しなかったでしょう。

絶対に真中の血祭りだ。
とうとう物語全体にひびを入れてしまった。…と思ってました。

いままでずっと楽しんできた『いちご』という作品を
最後の最後で投げ捨てることになるのか…。
東城の告白のとき以上に絶望するのか、と。


けれど違った。
河下先生は『奇跡』を書き上げた。


こんなにも、感動のあまり鳥肌が立つなんて…。


西野との関係を美しいままで、別れまで書き上げ
留学という問題を、こういう形でクリアさせるとは思っていませんでした。


この別れなら、ほとんどの西野ファンは納得いったのでしょう。


この展開で次回、東城と付き合っているということは絶対にありえません。


確実に西野エンドです。それ以外は認めない。


これで最終回にしなかったのはなぜかという話ですが
それは、真中自身がまだ未来への展開をなにも示していないからです。









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いちご100% 第164話 「あの日のノート」 

昨日のうちに電話ができなかったことを西野に謝る真中。


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「―悪いと思ってるよ。ワガママ言って
 ただ、どうしても西野に会いたくて―…」


電話で話す真中の背後には、東城からのノートが置かれていた。


その日。
2月14日。

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一日泣きはらして疲れきった真中の目に飛び込んだのは東城からのノートだった。

「…なんでこれが…」


東城が勉強のあいまに書いていたファンタジー小説。

主人公の生まれた国を治める美しい王女と主人公と同じ夢を持つ
はた織りの少女。



この小説に登場するふたりのヒロイン。
それはまさに東城と西野そのものだった。



東城はこの物語の結末を、最初から決めていた。


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「あの物語の最後。
 すべての戦いが終わって、疲れ果てた体で主人公が帰ったところは
 美しい王女のもとではなくて、同じ志を持った女の子のところだったのよ」


真中が西野との交際を始めた日。
その結末は変更された。


その後、真中と西野の交際が終わったことを知った東城。
バレンタインを境に一気に東城と真中との距離が縮まったその日。

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「あたし。 あの小説の主人公が
 ふたりのヒロインのうちどっちを選ぶのか、今やっとわかった気がするの」

部室で真中から抱きしめられたとき。東城の中で物語に再度変更が加えられた。

それ以後。小説のラストについて特に言及してきたところは今日まで無い。



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『…大丈夫なのか?
 これを読み終わったあとも
 俺はまだ西野と上手くやっていけるのか?』

このノートに書かれている物語が真中の心を揺り動かすのか?


前話で東城と真中の恋愛感情は清算したはずなのに、まだここからドンデン返しなのか?


まさかとは思う。
3冊のノートに書かれた物語の結末。
それは真中と西野の仲さえもくつがえす内容だとでもいうのか。

小説のラストに。
そこに東城の隠された想いがあるというのか。


だとしたら。あの決別は一体何だったのか。


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『東城は三人の登場人物にどういう結末を与えたのか』



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そして真中はノートを開く。

ノートに描かれたそれぞれの登場人物と真中・西野・東城を重ね合わせながら…。







そのころ、それぞれの場所でそれぞれの未来に向けて現在が動き始めていた。

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きりっと着物を着付けたさつき。
「『あの時、つきあっときゃよかった!』って言わせてやるんだからね!」


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「ちなみの真心溶けないうちにみんな召しあがれ」
パトロン目当てに余念の無いちなみ。


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「あたしは恋愛って素敵だと思ってるよ!」
恋愛に費やすエネルギーには意味があるという発言である。
初めて出会ったときからは全然想像つかなかったが、
憧れの東城が精一杯恋愛に生きた点を見てなにかが変わったのだろう。


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「これつまんね―物だけど…受け取ってくれや」
硬派右島の仁義。
予備校での勉強の助け合いから、お互いに異性に対して苦手同士の微妙なスタート。



なんでこんなに一気に人間関係を整理し始める?

この後一体なにを清算するのか!?






雪の降り止まぬ2月14日。バレンタインデー。
真中の急な呼び出しは一体なにを意味するものなのか?

夕食を共にする二人。

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『西野。昨日のこと全然尋ねてこない。
 思えば中3の時からずっとこうだ。
 俺達いつも肝心な部分には触れないままで』


違うだろ。
お前が全然肝心な部分に触れないまま逃げ回ってきたんじゃないか!?

西野は一度も逃げたことがない、自分の気持ちを前面に出してきていた。
それを真中が気がつかなかっただけで、読者はいつも痛いほど気付いていた。




『西野はカンがいいからこのあと何が起こるのか、もう気付いてるみたいで』




ふたりはカラオケボックスの個室に入る。
つとめて明るく振舞う西野。

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ほとんどが西野主導で進む中、真中は一人何かを決意した顔である。




『わざと明るく振舞って。 わざと明るい曲歌って――』




時間だけがすぎていく。


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西野が歌う曲の分だけ――
グラスの中身だけが減っていく――



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そして沈黙のときが訪れる…。



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西野はすでに何らかの覚悟を決めていた。


だがあえて真中に甘える。


「あたし。淳平くんの歌声が好き。
 淳平くんの声ってどことなく優しい響きがするんだ。
 ひさしぶりに聞けると思ったんだけど――」


真中の歌声でこの切ない空気を緩和しつつ、
西野はそれで自分の心を慰めるつもりであったのか?



その西野の気持ちを受けた真中がついに動き出す。



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「西野。話があるんだ…」




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「うん…」


西野の瞳が痛い…。
こんなタイミングで真中がなにをしでかすのかが怖い。


うつむく真中。


そしてベッドの上に置き去りにされたノート達。





カラオケボックスの外ではいまだに雪が降りやまず。

『清算』の夜はまだ始まったばかりである…。









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[ 2006/06/29 22:17 ] いちご100% | TB(0) | CM(3)

いちご100% 第163話 「あたしから」 

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「西野さんも、真中くん待ってるの…?」


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西野は戸惑う。
それは当然。


なぜ? なぜここに東城さんが来るの?


本命の受験日のあとに会いたいと、
真中からの電話は西野ひとりだけのものではなかったということか。

真中の帰りを待ちわびていた西野にとって
ここでの東城との出会いは読者に「清算につきあう覚悟」を求めるものであった。



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「どうしても真中くんに話したいことがあって…
 真中くんも多分あたしに聞きたいことがあると思うから」


(注さんの深読みか? 
 もうこの瞬間から東城は西野と目を合わせない。
 そしてその振る舞いが今まで東城とは別人である。)




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ついにこの日が。この瞬間が来てしまった。


ついに決着を。けじめをつける日が来てしまった。



今回ばかりは1コマたりとも見落とすな!!



この瞬間まで、真中淳平を中心にさまざまなヒロインが
中学生活そして高校生活という名の甘酸っぱい時代を走り回った。


そう。それこそ真剣に走った。


…その結果。
真中のそばには最初から真中のことを想っていたふたりが残った。



2月13日。
真中淳平にとっては本命の大学受験日であったが
ふたりのヒロインにとってはこの日が本命の相手とのそれぞれの決着日となるのである。


唯から東城にかけられた電話。
はたしてその内容はどういうものであったのか?


勉強会でのキスシーンか?

または…ベッドの下に置き忘れた下着のことなのか?


そして。
もしそのような内容の電話であるのなら…。
どのような形で『清算』するのであろうか…。





そしてそんな一触即発な修羅場に
雪の上を懸命に走ってきた真中がたどりついた。


そして息を整える間も無く発した言葉は西野の表情を暗くさせるものであった。

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「話があるんだ。東城…!」

言葉の意味をはかりかねる西野と、何かを決意したかの東城の顔がそれぞれに切ない。


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「淳平くん。あたし…?」
「あっ。えっ。えっと…。ちょっと。急用でその…」


なぜここで素直に東城と確認したいことがあると、西野に対して一言のフォローも入れないのであろうか。
そのせいでますます西野に不安をあおっているということに気がつかない。


「西野さんとの約束の後でもいいけど…」
と言いつつさりげなく真中の頭上に傘をかざす東城。
そして西野のほうを一度も見ない。
こんなにクールを貫く姿は今までの東城のキャラではない。


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そして一度うつむき、
無理やりに笑顔を作った西野は自身のしていたマフラーを真中に巻く
「これ。風邪ひいたらいけないから」


そして西野は帰っていく。
傘に隠れたその表情さえ読者に見せないものの

決してファンにとって見て楽しいものではないのは確かだ…。



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「お店に入ったらせっかくのマフラーはずしちゃうことになっちゃうし…」

この東城の心遣いがちょっとした前奏になるなど気がつかなかった。



東城の提案でふたりは裏の公園に向かう。



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ベンチに腰掛けるふたり。


東城に昨日のことを確認したい。
唯の言っていたことがはたして本当なのか。
もし本当なら東城の気持ちは…。

真中としては、この唯からの話をどのように東城から聞き出そうか迷っていた。
だが、話が話なだけになかなかきっかけをつかみかねていたのだが。


受験の出来から話は始まった。
予想より難しくて、せっかく東城に勉強見てもらったのに。と謝る真中。



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「…気。使わないで。
 本当は唯ちゃんに言われた内容に動揺していたからでしょう…?」


話を切り出したのは、覚悟を決めた東城だった。
ここから『清算』が始まる。


この事態さえも笑い話として片付けたかった真中であったが

東城はそれを許さない。



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「…意識なかったんだね」
「そうそう」
「じゃあ、詳しく話すね」


唯が見たのは、
真中が東城の上に覆い被さっていたこと。
そして東城も真中の背中に手をまわしていたこと。
そのときキスはしていなかった。 


多分、顔が近かったからそう見えただけ…。



「でも。その前に…してるの」



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「キス……。 あたしから、真中くんに」


本来ならこの発言は真中に向かって言うつもりではなかった。


だが…。
東城は清算しなければならなかった…。

たとえ、抱擁の現場をキスシーンと勘違いされてしまっていても。

実は唯の見た現場は、キスの後の抱擁だったのだから。



東城にとって、真中への想いの終着点は
誰にも見られず。
誰にも知られずに

東城だけの秘密として、胸の中でひっそりと終わるはずであった。


だが運命のいたずらで唯に見つかってしまった。


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「勝手なことして怒ってたらごめんなさい…。
 けどもうあたし何も望まないから、
 こんなことで想いが満たされたってわけでないけど
 あたしは…やっと前に進める気がするから」



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「真中くんを好きだったことも、結局は実らなかったことも全部に感謝できるよ。
 あたしの中の様々な感情を真中くんのお陰で知ることができたから」



いま東城の表情は吹っ切れたいい顔をしていた。



複雑な気持ちを引きずりながらこの先の人生を過ごすよりも
いまこの瞬間にすべてに決着をつけて前を向こうとする。
東城の瞳はたしかに未来を見つめていた。



そして自ら立ち上がり、別れを切り出す。



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「……じゃあ。
 唯ちゃんを責めないであげてね」


こんな瞬間でも真中のことをおもいやって笑顔で去っていく東城。



ひとり残された真中は、去っていく東城の背中に向かって語りかける。


『もう一度振り返ってくれ。東城!』

『…いや。振り返るな』



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『振り返るな―…。』


もう一度振り返りたい。
でも振り返れない、東城。

もう一度だけ振り返って欲しい。
でも振り返って欲しくない、真中。




別れの際には涙無しではいられない。


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真中はベンチに崩れ落ち、声を殺し泣いた。


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東城も真中への気持ちを断ち切るために傘を握り締めながら涙をこぼした。












ザッ……


風がおさげをゆらす。


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初めて東城の小説を読んだ次の日。
小説のイメージを映画にしたいと語ったその日。



初めて出会った女の子が、初恋の女の子だった。


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自分の夢を語っても笑わずに聞いてくれた女の子が東城だった。



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互いに互いの才能を認め合い、励ましあいながら時間を紡いできた。



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それは映画や小説のみならず、ふたりでいれば何だってできるような気がした。


そう。ふたりでいれば無敵になったかのようなパワーがあった。




もしあの頃に、もっと早くお互いの気持ちに気付いていれば…。

もっと早い段階で、ちゃんとその思いを伝えていれば…。



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このマンガはもっと早くに完結した。(ぉぃ)







翌日。真中あてに届いた封筒には
東城が中学の時書いていた小説のノートと
その続きが書かれているノートが入っていた…。



数学のノートに書かれた小説。


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それはふたりだけのささやかな夢の結晶。
ふたりのほかには誰も知らない、ふたりをつなぐノートであった。


それが真中のところに送られてきた。

これが何を意味するのであろうか。



『東城』の気持ちがつまったノート




次回。物語が大きく動く!!










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[ 2006/06/17 00:39 ] いちご100% | TB(0) | CM(4)

いちご100% 第162話 「決戦前夜」 

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『今はこのままで―――』

東城は目をつぶって、真中の背に腕をまわす…。



(この東城の行動についていろいろと非難はあるだろう。
 よくわかっている。
 だがあえて注さんはいち東城ファンとしてこの行動について語りたい。)




東城にとって、この想いの終着点は
誰にも見られず。誰にも知られずに東城だけの秘密としてひっそりと終わるはずであった。


しかし運命のいたずらにより、東城からのキスだけでは清算は済まなかった。
寝ぼけていた真中は、そばにいた東城を西野と勘違いし抱きしめてしまったのである。


もちろん東城はここで真中の抱擁を回避できた。



真中には西野さんがいる。
自分はいま西野さんと勘違いされて抱擁を受けている。

自分の名前を呼ばれたわけではない…。


でも…。


それでもいい。


それでもいまはこのままでいたい。



この行為は倫理的にいけないことであることは承知のうえ。
この行動が自分の気持ちを満足させるだけで何も解決しないことであることもちゃんとわかっている。


もはや理屈ではないのだ。
3年間の自分の想いをこういう形でしか清算できなかったのである。
たとえそれが人から非難を受ける行為であったとしても。


実際。
男だってこーゆー気持ちはあるのだ。
たとえそれが許されないことだと知っていても。



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しかし。
背徳の幸せの時間は長く続かない。

こっそり入ってふたりを驚かそうとした唯が逆に驚いてしまった。



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あまりの現場を目撃してしまったために悲鳴さえあげられない唯。

この現場はどこをどう見たってキスシーンである。
これだけ顔と顔とが近づいて、
東城の腕は真中の背に回され
スカートはめくれあがってしまっている…。




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「ああっ!」
唯のなかにくすぶっていた謎が解き明かされる。

真中のベッドの下に眠っていた不発弾がここで炸裂する。

『西野さんには大きすぎても、東城さんには…』



以前。この爆弾を発見したとき唯は真中に聞いた。

「そうだ! あのさ淳平ってさ。付き合ってる人いたり…する?」
「へっ? あ…うん一応今は西野と…」

「…ふぅ…ん。じゃあコレは西野さんので二人はもう…。
 お、オトナ… ってこと…???」



真中はたしかに、西野と付き合っていると言った。
それなのに…。
それなのに…東城と部屋で…。


これって浮気!!


唯は真中を許せなかった。
今回、東城に家庭教師を頼んだのは唯である。
それが誤解だったとしても、自分がこの事態を招いてしまったという責任感がある。








唯の責任感など何も知らない真中は、東城との勉強会を楽しんでいた。
高校受験時の勉強会を彷彿とさせるような、この懐かしく居心地のよさを楽しんでいた。

『中学の時。東城のことどんどん好きになってったのも勉強会でだったかな…』


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そして…。
多少の罪悪感を抱えたまま、ひさしぶりに電話をくれた西野にまでウソをつく…。

「そっ。そう今も勉強中…。
 え? ああ。朝から晩まで一人でずっと受験勉強だよ」


それでも受験が終わったら会う約束をするふたり。








そして真中の本命校。青都大学受験前日の夜。

2月12日の夜。 



全国各地に雪を積もらせる静かで冷え込みが始まる夜に

唯からの『清算』 『決戦前夜』が始まる…。



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「淳平に話したいことがあるの」

受験日前日は勉強会をもたない約束だったが唯は真中の家に来た。


唯自身に降り積もった雪を払い落とすよりも先に伝えなければいけないほど重要な話。
普段からは想像もつかないほど真剣な唯の表情。
ここに彼女の責任感を強く感じる。


そして唯から投げつけられた言葉に真中は激しく動揺する。


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「勉強会の初日。淳平と東城さん抱きあってキスしてた」



真中には全然思い当たる節がなかった。
だが、真中から東城に覆い被さっていたことを告げる唯。


…。
そう。
あの日。
たしかに真中の記憶がない時間があった。

それは東城が中座したわずかな時間。
その時間の記憶が抜け落ちている。


「待てよ。けどそれ様子おかしかっただろ?」
「東城さんも淳平の背中に腕まわしてたもん」



真中はこの行為について記憶がない。
女の子を抱きしめている夢を見ていた気がするだけ…。

ただし、唯の言うことが本当なら
その瞬間にふたりは抱き合ってキスをしていた…。



動揺し混乱する真中。
それは事実なのか?

衝撃的な言葉を振り切るように真中は声をあげる



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「…ってなんで!!
 青都大の受験前日にそんな事言うんだよ!!!」




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「ばちが当たればいいと思ったんだよ!」


唯。言った━━━Good━━━d(゚∀゚)━━━Job━━━!!!!


すべてのいちごファンがずーっと思っていたことを代弁してくれました。


「そうだよ、二人の女の子に優しいふりしてさ。
 結局どっちも泣かせるよーな事、淳平はしてきてるんじゃん」


真中のことをよく知っている幼なじみだからいえるこの言葉。
この言葉は唯だけにしか言えないのである。




そして『清算』はつづく…。





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昨日の夜に唯から聞かされた出来事が
真中から受験に対する集中力を欠いていく…。



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ほぼ同じ頃。
東城の携帯に唯からの着信が届く…。



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真中の家の前で、雪と戯れる西野。
「もうそろそろ受験終わって帰ってくる頃だよね」

本命校の受験が終わったら会う約束をした西野。
早く会いたいから、真中の家の前で待っていた…。



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傘を手に真中を待つ西野であるが、ひとつの足音が西野の瞳を凍らせる。




とうとう3人を巡るこの物語に決着をつける日がきた。

三者三様の想い。
それぞれの想い。
ふたりだけしか知らない事実。
ひとりは知らない事実。



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中学3年の初めての出会いから続くこの三角関係。


このアンバランスに決着をつけるために、ふたりはここで出会う。




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「…こんにちは
 西野さんも、真中くん待ってるの?」



なにかを決断したかのような東城の瞳。
もうあのときのようなおどおどした東城ではない。


西野の瞳がさらに凍りつく。











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余談
この話を読んだのは、すごく暑い日であったことを記憶しています。
汗だくになりながらコンビニに入り読み耽ったのをおぼえています。

しかし、このラスト1ページを見た瞬間に背中に冷水をくらったかのような錯覚を感じました。

来週どうなる!? 
そんな気持ちでいろいろなシミュレーションをしたことをおぼえています。
そんな気持ちで何度も何度も読み返して、ジャンプ買ったことをおぼえてます。
[ 2006/06/04 17:36 ] いちご100% | TB(0) | CM(4)
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