
真中が登校してくると、廊下に雨雲をかぶった女子がいっぱいいた。
「ひどいーっ。なんでーっ」
「あたし達これからどーすればいーのーっ」
女の子たちが涙する理由は天地だった。

「悪いけどみんなのアイドルとしての僕はもういないんだ」
女性の味方であったはずの天地。
この心変わりの理由は何か。
それは受験勉強に専念する…などという甘いものではなかった。

天地が専念したもの。それは東城の存在。
「本腰入れて、綾さんを獲得しようと考えたからだ」
天地の決意は中途半端なものではなかった。
とりまきの女の子達をすべて失ったとしても。
東城の通う塾に行く決断をするほどの決意である。

ここまで入れ込んでいる天地だが、おちゃめな点は相変わらず健在である。
天地のふざけた態度で東城の心が揺れ動くというシチュエーションはわからないが、
舞もこずえも納得するほどのいい男であるのは間違いない。

男性恐怖症のこずえもこの通り。
「うん…。王冠とマントと白い馬が似合いそう…」
そうして、いきなり俺と東城の間にズカズカと天地が入り込んできた…。
しかし東城はさらりと天地をかわしていく。
東城は軽い女の子ではない。
それだけで真中はとりあえず救われていた。
しかし、女心のわかる男。天地には東城の心の中を見透かしていた。
真中とこずえの関係が気になっている東城の心をすでに看破していたのである。

「けど、公平な優しさって結局自分の首を締めるから…」
と真中の優柔不断ぶりまで切って見せる。
とにかく今回の天地はすでに本気モードに突入している。
だから、普段から遊んでいたと思われる女の子達の誘いさえ

「悪いけど。そういうのもう興味ないから」
とみんなの前できっちりと断ってみせたのである。
正直真中は不安を隠せない。
『天地が本気になったら…たしかにどうなるんだろう
だけど、そう簡単に東城の心を動かせるわけが…』
塾の帰り道。
東城を送る天地。
遅い時間ということもあり家まで送るところであったが
途中で東城から牽制を入れる。

「天地くんの家こっちの方向じゃないよね」
しかし天地は動じない。

「その優しさ…僕はキミを好きにならずにはいられない…」
「あの、わたし天地くんの気持ちには…」
「わかってる! キミが秘密にしていることも知っている!」
「秘密?」

「キミは真中淳平が好きだ。だが僕はそれでもかまわない」
今まで東城がただひとり胸の中で秘密にしてきた事実。
しかし、天地や外村といった少しでも読みのできる男の前には無力な抵抗である。
なすすべなく立ちすくむ東城。
そして天地の去り際の一言
「…綾さん。僕は本気だから」
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