2泊3日最後の夜。

「雨の音がうるさくて…
眠れないの…
こっちの部屋にいてもいい…?」

Tシャツにショートパンツ。
こんな無防備な姿で。
夜、男の部屋に訪ねてくるって事だけで…。
緊張してしまう。
「あっけないな、3日間なんて」
「でも今はまだ『あたしだけの淳平くん』なわけだ」
「いろいろおねだりするなら今しかないね」

西野の言葉。行動が
真中の本能を刺激する…。
たしかにこーゆーのって男にしてみれば最大のチャンスだろう
だけど…。
それは西野と真中が付き合っていればという場合のことで。
だから、真中は困っていた。

「決めた」
西野が動いた。

「今夜は淳平くんに一晩中、話聞いてもらおっかな」
無理だ!
今までずっと理性で西野への欲望をおさえてきたのに。
そんな西野の口から真中にとっては聞きたくない言葉が発せられた。

「お願い淳平くん。あたし他にもう何も望まないから…
それに…別にやましいことないじゃない
あたしたち。彼氏でも彼女でもないんだし」
真中は布団に戻った。
半ばヤケクソだった。
「あたしたち。彼氏でも彼女でもないんだし」
そんな言葉西野の口から聞きたくなかった。
でも今ふたりはひとつの布団に入った…。
遠くで雨音が聞こえる。
互いの背中から互いの体温を感じながら
西野は、話し始めた。
「タイムスリップできたらなって思ってた。
中学3年の夏に戻りたい。
あの頃悩みなんてなかった。
進路も将来のことも漠然としか考えてなくて
今は…全部が苦しくて…」
言いながらも西野は混乱していた。
もっと言いたいこと、たくさんあるのにどうして言えないんだろ

「寝るとき右のほっぺが下になるほうが楽なんだ
だからそっち向いてもいい?」
西野の手が真中の方に触れる。
西野の体温がすべて真中の背中に伝わってくる。
以前なら必ずこういうとき邪魔が入った。
睡魔であったり、携帯の着信音だったり
けど今回は何も…ない

「西野!!」

一瞬動きかけた真中であったが、
この西野の目をみてしまったら理性が勝ってしまった。
西野を励ます、言葉が溢れ出す真中。
「今は苦しいかもしれない。
だけどそれは西野の幸せな未来のために西野が自分で選んだんだよ
それでも嫌でタイムスリップしたくなったら、そのときは俺も行く
俺の笹舟の願いは『西野がずっと笑顔でいれますように』って書いたんだ!!」

一瞬時間が止まった。
真中にいたっては記憶まで飛んだことであろう。
西野からのキス…。
…これは事件ですっ!!

「淳平くんと一緒なら、あたしは過去でも未来でも構わない」
キスの余韻にひたっていた真中を置いて西野は自室へと帰っていった。
西野の笹舟に託された言葉をつぶやいて…。
『もう一度真中くんの彼女になれますように…』
翌日泉坂に戻った二人。
真中としては昨日のキスがまだ夢のように思えてならなかった。
元気が戻った西野の口から前向きな言葉が飛び出した。
「昨日一晩考えたんだ。
自分で選んだ道だから振り向かず歩いていこうって」

「最後にもう一度、淳平くんに感謝」
もう一度キス…。
今度は夏の夜の夢なんかじゃない。
夏。
開放的な季節。
この高校最後の夏休みはまだまだ終わらない!!
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