注さん的 神展開スタートの章

「あたし、真中くんに話しておかなくちゃいけないことがあるの…」
しかし、その後に続く言葉が出てくるまでにはかなり時間がかかった。
手を組み、下を向き何度も何度も言葉を選ぶような東城…。
重苦しい雰囲気が部屋全体に広がる。
東城からの告白?
…だがこの緊張感は二人にとって大切な言葉を投げかける間であった。

「あたし、真中くんと同じ大学目指すのやめる…かも…」
その発言は、真中と共に映画の道を進むことを断念するということである。
少なくとも真中はそう感じ取ったことである。
言葉数が減っていく真中。
唯一言えたことは
「東城の考えは正しいよ。
東城にはもっといい大学行っていっぱい才能伸ばしてもらいたいから」
そう。
才能を持つもの同士が馴れ合いで進学し
才能を潰してしまうことが真中にとっても美鈴にとっても耐えがたかったのである。
まして淡いながらも恋愛感情を互いに持つものなら
はっきりと形にして進学してもらいたい。
それは美鈴と東城だけが感じたビジョンなのである。

だが真中が部屋を出た瞬間。それぞれに崩れ落ちる。
東城だけはいつまでも真中のそばにいてくれると思ってた。
その東城が違う大学に進もうしている。
つまり、この映画が終わったら二人の夢は終わり…。
それぞれ違う進路に進んでも映画を続けることはできるのかもしれない
だが、二人共通のベクトルはこの映画の完成と共に終わってしまう。
そして翌日。
すべてのシーンが撮り終えたら合宿は終了する。
そう事実上合宿最終日を迎えるのである。

和服衣装で役に臨む東城。
この日一番最後に告白シーンの撮影を控えているが
二人の演技はバラバラだった。
さっきからNG連発で美鈴が心配するほどである。

「あたしのせいかもしれない。
昨日東城先輩にキツイこと言っちゃったんだよね」
美鈴としては間違ったことを言ってはいないと自負しているところであるが
それがこの撮影に影響を及ぼしているとあれば責任重大である。
真中も東城もまったく目を合わせないまま、撮影は続いていく。
『胸に穴があくってこんな感じなんだな
考えても考えても、次々に流れ出て体すら軽い感じで』
それでも時間は過ぎ
撮影は最後のシーンへ…。

「東城。…その、セリフ、マジ変えていいからさ
ニュアンスさえ合ってれば具体的なこと言わなくてもいいよ」
緊張感を出すため、いきなり本番とする。
「SCENE122」
「スタ------ト!!」

見つめあう二人。
やがてヒロインが使用人を残して、東京の学校に進学することを告げる…。
だが二人はまだ動かない。

長い長い沈黙がつづく。
真中の心にも動揺が走る。
『頼む東城。何でもいいから喋ってくれ、演技なんだから。
…これは演技なんだからって割り切ればいいだけだろ?
ああ。またその壊れそうな表情』
無限に続くかと思われた沈黙は東城のセリフから切り開かれた。
そして、『いちご100%』 神展開が幕をあける…。

「……私は……
勇気がなくて臆病で
いつもこの想いを心の底へとしまいこんでいて」

「伝えなきゃ何も始まらないのはわかっています。
でないとこの関係が一生変わらないことも
でも、口にしたら全部が泡のように消えてしまいそうで怖くて
私には今のままでも十分に幸せだから。でも…」

「でもあなたが好き
あなたのことがずっとずっと好き……!」
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嵐泉祭準備中とか。
嵐泉祭当日とか。
進路決定時期とか。
なんにしろまだまだ先の話ですがね…。