文化祭が近づき
学校中がソワソワと落ち着かない雰囲気の中。
生徒たちは『ラブ・サンクチュアリ』の件でおおいに盛り上がっていた。
「そりゃはしゃぐさ!!
愛しいあのコとキッキッキッキッスのチャンスもあるやもしれぬ…」
「えっ!? オマエらまだキスしてねーの!?」
「そうなんだよ〜聞くも涙 語るも涙
俺こんな口してっだろ?
ちなみちゃんのことなんかパクっと食べちゃいそうな気がしてさ…」
「あっそ。俺はいーけどね。ちなみちゃんの純潔がそれで守られるのなら」
などと他愛のないバカ話をしながら、
真中は昨日のさつきとのキスを思い出していた。

『みんながあの文化祭のイベントに
何か期待して浮き足立って、それなら無理ないことなんだろうか
西野のあの言葉も…』

「あたし…今年の誕生日プレゼントこれがいいなぁ〜。
だってなんか面白そうだもん」
「そっ…そんな先のことはおいといて!
い、一緒に出かけようか。えっと今度の日曜日!
そうだ、あそこ行こうか。水族館!
今年の夏にリニューアルオープンしたっていうじゃん?」

「…うん!」
西野は笑ってうなずいてくれたけど。
これは明らかに逃げである。
真中はこの現実から逃げてしまった。
『ラブ・サンクチュアリ』というイベント。
あくまで一対一でないと参加ができないイベントなのか?
いまだ詳細さえ明らかにされてはいない。
一対一であれ、参加をするのなら真中は誰かを選ばなくてはいけない。
もう物語前半のときのような誰にでもいい顔している真中では
この物語はいつまで経っても最終回を迎えられない。
何より高校生活もあと半年を残すのみとなっているのである。
そして西野とのデート当日。

西野を待っていたところをこずえに見つかってしまう。
おまけに途中で誰かにぶつかって、
よろける形で真中に寄り添った。

「だーれ? あのコ。どこの学校のコ?」
そんな一部始終を西野に見られていたようだから…。
デートの初っ端から機嫌が悪い。
「知らない! ほら、早く行こ!」
『やべーよ。怒らせちゃったかも
こずえちゃんのこと、軽くカン違いしてるみたいだけど…』
ちょっと嫉妬な西野。
ちょっとヤキモチな西野。
そんな西野も可愛いですね。
しかし真中はなんとしてでも西野に笑ってもらいたかった。
いつにもなく道化を演じる真中。

そんな真中を「しょうがないなぁ〜」って感じで許す西野。
このため息がいいですね。

「んー? この水槽は何がいるのかな〜」
「え? どれどれ」
「!」
普段ならきっとなんでもないこの行為。
このくらいの接近ならそう問題はない距離である。
しかし西野は真中のそばを離れ、早足で逃げてしまう。
真中はとっさに追いつけず、周りの客と一悶着起こしてしまう。

「淳平くん? 淳平くん…どこ?」
はぐれてしまった西野。
だがここからドラマは動き出す
ふと周りを見渡せばカップルばかり…。
「カップルばっか・・・」
数年前ふたりはカップルだった。
堂々と手をつなぎ。
寄り添い。
笑いあった。
余計な気づかいもなく…手をつないだ。
でも、今は違う。
立ちすくむ西野。
「でもあたし達は…?」
『はぐれそうだから…ちゃんと手を…』
いまはカップルじゃない。
友達。
でも本当は手をつなぎたい…。

「よかった! 見つかって…」
突然つながれた二人の手。
それはたしかに西野の希望であった。
だがそれは驚きと、歓喜と…
言葉では説明できない感情が湧き上がる瞬間であった。

「西野!?」
走り出す西野。
手をつながれた瞬間、泣いてしまった西野。
涙を見られたくなかった。
感情の高まりを真中に見られたくなかったのである。
西野の走った先は『公園』
そして公園にある遊具 『鉄棒』の下に西野はいた…。
こずえとの事を怒っていると思った真中は弁解をする。
しかし西野は取り合わなかった。
「もういいの。誕生日プレゼントなんてどうでもいいの」 「嫉妬する資格なんてあたしにはないし、 水族館で手をつなぐ理由もないの」
「あたしは…あたしが欲しいのは」 
そう言うと西野は鉄棒にぶら下がった…。
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