大学受験もそろそろ大詰め。
センター試験までもうそんなに時間がないその日。
12月26日。
塾に行くために羽織った真中のジャケットのポケットから
西野から送られたクリスマスプレゼントがこぼれ落ちる。

それは手紙と、学業成就のお守りであった。
「え…これ。いつの間に…」
『今年のクリスマスは私にとってすごくステキなクリスマスになったことと思います』
実際にはちょっとしたことからケンカしてしまい、ステキなクリスマスなんてできなかったけど…。
ちょっとだけ罪悪感にさいなまれる真中。
その夜。
塾帰りに西野に電話を入れる。
「すっげ〜驚いたよ! で。アレ一体いつ入れたの?」
「うふふふふ。ひーみーつ!」
「もし。よかったら会えないかな。少しだけでいいから…」
「…ムリだよ」
「えっ!! 何? もしかして怒ってる?」
ムリも当然。
そのころ西野は雪積もる金沢まで家族旅行をしていたのである。

「郵便受けにプレゼント入れたの淳平くんでしょ? ちゃんと使ってるよ…可愛い指環!」

「ねぇ淳平くん。一緒に年は越せないけれど、来年も大好きだから…。
来年もよろしくね。淳平くん!」
指環にキスをする西野。
この何気ないしぐさに何かと反応してしまう。
クリスマスは過ぎた。年末はもう会えない。
そう。
留学するということは家族とも会えなくなるのである。
真中とばかり時間を割くわけにはいかないのである。
来年…。
といっても春には西野はフランスに行ってしまう。
それまでの時間。何日会えるのかはわからない。
ここに来てようやく西野との時間を大切にしなければいけないとわかった真中。

やっぱり笑顔の西野はかわいい。。。
河下先生の描く女の子はみんな笑顔がかわいい。。。
屈託のない笑顔がみたい。
女の子の笑顔って、癒されるよね…。
書きながらこのページで腕が止まってしばらく中断してしまったほど。
うーん。
最近…笑ってないな。
最近…。ゆとりがない。時間がない。
夜中遅くまでパソコンに向かい合うものの書けない…。
(いかんいかんいかん。愚痴が出そうになった…)
…話を続けよう。
このあたり時間の流れが速い。
もう大晦日である。
推薦入学を勝ちとった生徒はともかく、受験生にとって年末年始は無い。
大晦日も正月もすべては受験が終わってからなのである。
塾で年を越した真中たち。
講師に新年の気合を注入されたところでそれがそのまま受験力となるわけではない。

センター試験の難解さに自信を失い、完全に沈んだ真中。
受験勉強そっちのけで映画に取り組み。
クリスマス直前からようやく勉強に励んだものの、いつまでも付焼刃が効くような話ではない。
真中が点を取れなかった英語も、唯にかかればすらすら読解されてしまう。
塾も自習中心となったようで、
勉強を教えてもらいたい真中としては塾へ行く意味がなくなってきたのである。

「唯。マンツーマンで勉強教えるの上手な先生に心当たりあるよ。まだ学生だから多分タダだし」
そして唯の紹介する家庭教師が来るその日。
家庭教師代の浮いた真中の母は美容院へとでかけていく。
連日朝まで勉強している真中にとっては、眠気とも戦いであった。


「えっ? と。東城!?」
「えっと…。唯ちゃんに頼まれて来たんだけど」
唯の紹介した、家庭教師とは東城のことだった。
真中としては困ったところである。
いくら勉強会とはいえ西野以外の女の子と二人きりという設定は好ましいものではなかった。
ましてついこの間まで互いに意識していたふたりである。
そんな真中の顔色を見透かしたのか東城は言う。
「学校終わったら唯ちゃんも来るって。唯ちゃんも一緒に勉強したいって言ってたよ」
ふたりだけの勉強タイムはおよそ一時間ほど。

東城が中座から戻ってくると、真中は連日の疲れが出たのか眠っていた。
さきほど洗面台においてあった時計は15時10分前をさしていた。
唯が来るまでもう少しといったところである。
『きっと毎晩遅くまで勉強してるんだ…』
そんな真中の寝顔を見ているうちに、突然東城の脳裏にクリスマスの悪夢が甦った。

『綾さん…』
天地のキス未遂事件。
「や…」
『なんでこんなこと思い出したんだろ』
この瞬間。
東城の中で何かが動き出す。
それは今まで誰にも見せたことのない一面。
それは理性ではなく、野生。

『真中くんがいい。初めての人は真中くんがいい』
この行為がいけないことであるのは知っている。
この気持ちは持ってはいけないものであることも知っている。
だけど…。

『それ以上もう何も望まないから。だから…』
真中と東城の間に『キス』は一度もなかった。
事故や偶然で触れたことは二度ほどある。
いちご100% 第036話 「秘密の出来事」最初のキス?いちご100% 第131話 「IN THE 暗闇」2度目のキス?だが今回は違う。
明確な意志を持って行う『キス』である。

『神様許して――…』
言葉を胸に秘め、真中と唇を重ねる東城。
ふたりの他に誰もいない部屋。
そしてこの事実を知っているのは東城ただひとり…。
ただひとり、真中への思いを胸に奥にしまう決意であった東城。
それはあまりにも孤独な幕の引き方であった。

だが。目を覚ました真中に押し倒されてしまう…。

一瞬。真中の目が覚めていたのかと本気で疑った。
「真中く…」
「…西野…」

『…ああ。そうか…』
呼ばれたのは自分の名前ではない…。

『真中くんはあたしを西野さんだと間違えて…』
さらに寝ぼけてたうえでの勘違いでも…。

『でも…。それでも』
それでもいい。
それでもいまはこのままでいたい。

『今はこのままで―――』
東城は目をつぶって、真中の背に腕をまわす…。
この記事の原作はこちらまで
162話更新に専念!