
「だから!
今日出席しなくていいから! 絶対学校来んなよな!!」
泉坂高校卒業式当日。
真中の脳裏には中学卒業時の悪夢がよぎったに違いない。

「おめでとう!
あんた。泉坂受かったのよぉ〜〜〜っっ!!」
母親が式典に駆け込んできて、真中の高校合格を告げたシーン。
このあと卒業証書もろとも演台から転げ落ちた真中。
たしかにトラウマにならないわけではないが
こんなこともう一回やられたら母親とは疎遠になって当然である。

扉絵。
とうとう、この日が来てしまった。
入学があれば当然、いつかは卒業する。
ヒロイン達が集う扉絵もこれが最後である。
3年前。中学生のとき。
すでに将来の夢を 映画を作る人になりたいとしていた真中にとって
泉坂高校の映像研究部に行くことは夢への第一歩であった。

「東城さん。桜海学園受けなかったの!?」
「うん」
東城も泉坂を受けるという情報を聞き合格を決意する真中。
「そうだよ俺は!!
やりたいことがあるから泉坂高校に行きたいんだー!!」

しかし入学試験での東城をみて
屋上で出会ったいちごパンツの女の子だったことが判明。
髪の毛おろして、メガネ外したらとんでもないほどの美少女だったなんて…。
結局。試験どころではなくなってしまい、真中はかろうじて補欠合格となる。

「あたし。泉坂高校には進学しないの」
泉坂の合格発表の日に告げられた爆弾。
自分の人生を人に合わせて生きていくのはつまらない。
これが当時から確立されていた西野のスタイルである。
そんな高校進学までのシーンを振り返りつつも
卒業式はあっけなくも淡々と進んでいった。
『こないだ入学ばかりなのに…
とまではさすがに思わねーけど、やっぱり、あっけない…
こんな紙切れ一枚もらって、俺達どんどん押し出されていくんだ
もう少し高校生でいたいなんて
俺って、やっぱ。甘いのかな…』
式は淡々と進み、卒業生からの答辞となった。

答辞を読んだのはなんと東城。
入学当時は引っ込み思案で恥ずかしがりやだった東城が。
卒業生代表として壇上にあがる…。
この事実に真中も一瞬驚かされた。
「三年前の今頃。私はある夢を抱いてこの泉坂高校を受験しました」
だがさらに驚くのはこの答辞の内容である。
「それは入学したら中学時代からの同級生と映画を作りたいということでした」
この答辞の滑り出しに、真中は動揺する。
当時。
真中は知っていたのか。
すっとぼけていたのか。
それともマジで知らなかったのか。
東城の当時の気持ちを集約しつつ、答辞と共に過去を振り返りたい。

「そしたら。一緒に映画作ろうね…!」
真中が合格するか、わからないほどのあまりの試験の出来の悪さを
東城が勇気づけるための発言。
真中のつくる映画のためになにかをしたい…。
自分の小説を「すごい」といってくれた真中のために脚本を書き始めた東城。

「しかし。生憎その夢を叶えられる部はすでに存在しておらず…」

7年前はコンクールで賞をとっていた映研だが
いまはIT分野に力を入れたCGでの映像作品をメインに展開している部となっていた。
しかし真中としてはフィルム映像にこだわっていたのである。

「作ろうよ!! あたしたちでこれよりもっと面白い作品作りましょう!」
映研がないという事実に落ち込んだ真中のために
真中が泉坂を受けるきっかけとなった7年前の泉坂映研映画フィルムを探してきた東城。
角倉の残した映画に対して、再び映画への創作熱が燃え上がった日。
この日が泉坂高校映像研究部のスタートである。

「高校生の本分は本来なら勉強なのかもしれません。
それでも私の三年間のすべてが
映像研究部と…その仲間達と共にあったと心から思います。
何もかもが手作りで、でもみんなで協力しあって―…」

東城の答辞に3年間の映研活動が真中の脳裏にフラッシュバックする。

東城の初めての脚本作品。
色気が足りないと外村が手を入れたために、露出度の強い作品となってしまった。
さつきのイメージビデオと言っても過言ではないであろう。
おまけに主演男優が小宮山というところで
果たして本気で撮った作品だったのだろうかという疑問は今でも残る。

その映画の編集作業の途中。
ふたりの唇はたしかに、触れあった。
なにげない事故のはずであったが…。
なんでもないことと捉えることは出来なかった。

「こないだみたいに、討論しあえる有能な後輩が欲しかったんじゃない?」
2年目。映画館で出会った辛口批評娘。外村美鈴の入部。
映研初年度作品を、脚本と主演女優だけで、なんとか見れると切り捨てた。

その美鈴が2年目の作品の主演女優としてスカウトしたのは西野つかさだった。
東城の脚本を読みこんでスカウトしたものの、真中・東城・西野の関係など知らなかった。
ただ、純粋に西野のキャラクターなら映えると考えたのである。
そして、真中に対する恋心こそあれ。
いい作品を作りたいという気持ちは東城もまた然りであった。

その撮影合宿初日の夜。
合宿所のロッジにたどり着けず、物置小屋で嵐を避けたふたり。
まるで三島由紀夫の『潮騒』 を彷彿とさせるシーンであったが。
そこは少年誌の限界である。
だが、後にも先にもこれ以上の接触はこのふたりにはなかった。


そんな2年目の作品もノンフィクション映画の土俵の上では評価が低かった。
85作品中の15位の努力賞。
屋上で泣き出しかけた東城を支える真中。
「言っとくけど俺は、これからも東城と映画作るつもりだよ!?」
「俺は東城のストーリーで絶対いけるって思ってる!!」
このあと、美鈴・ちなみが屋上に上がってこなかったら
間違いなく東城の告白があっただけにつくづくタイミングの怖さを思い知った。

そして高校生活最後の作品。
昭和初期。ヒロインは旧家の令嬢。
引っ込み思案だが優しい心の持主――
主演女優には東城が抜擢される。
今まで登場したヒロインの中でどう考えても東城だけしかこのイメージを伝えることが出来ないのである。
紆余曲折を経て、真中の夢のために勇気を振り絞って挑戦する。

撮影合宿のさなか。
またしても接触事故から始まったキス。
ふたりの唇はたしかに、触れあった。

もはや事故とはいえない…。
東城にとっては間違いなくキスだったのだ。
この事実をなんでもないことと捉えることは出来なかった。
しかし今の東城の真中への思いは依存であることを知ってしまう。
馴れ合いのままこの関係を続けていくことはふたりのためにならない。

だが、思いは伝えたい。
東城は芝居を通して完璧なまでのアドリブで
脚本の筋を壊さずに自らの思いを重ね合わせた。
「あなたのことがずっとずっと好き……!」

そして高校生活最後の文化祭の日。
夢が生まれ。夢が育まれた場所で。
その夢が終わろうとするその日。
今までふたりで築き上げてきた夢の最終日。
誰もいなくなった部室でただふたりきりの夜。
「…好きなの」しかしながら東城の恋は実らなかった。
だが、それでも東城は
この泉坂高校での3年間の思い出をこう締めくくる。

「この泉坂高校の自由な校風の中で過ごした3年間は、私の大切な宝物です…!」
東城は最後までいい女の子でした。同じ志を持った仲間たちと映画を作り。
素敵な恋をした。
その恋は実らなかったけれど、彼女はこの経験を糧にさらなる飛翔のステップとした。
だから。
間違いなく幸福な高校生活という時間を過ごした。
そう願いたい。
そして今までの連載の中で最高の笑顔を見せる。

中学生の時のオドオドしていた東城とこの東城が同一人物とは思えない。
すがすがしいまでの笑顔である。
真中の気持ちを走らせた東城の小説のエンディングがここであきらかになる。
真中に似た主人公は西野に似た王国の王女ではなく、
どこか東城に似た幼なじみの少女の元へ帰っていった…。
結局、あのあと東城の描いた物語は
東城個人の気持ちが先行した物ではなく、小説家として物語を完成させたのだ。
『俺が東城を選ばなかったこととは関係なく―…』

最近テレビや雑誌の取材の絶えない東城。
中路賞作家18歳!
綾タンの最後の制服姿
推定Fカップの文学的アイドル…。
このグラビア記事には注さんかなり笑わせてもらった。「逃した魚はデッカイかもよ〜?」
いや。違うんだ外村。
真中に振り回されずに、自分の一番望むべく道を東城は進めたのだ。
勉強の合い間に暇つぶしのように書いていた小説が
偶然にも真中によって才能を見出され、褒められ、自信を植え付けられて
とうとう、小説家として歩むことが出来たのだ。
真中と付き合っていたらまた全然違う人生を歩んでいたに違いない。
注さんにとってこの『いちご100%』 は東城の成長記であるととらえたい。

そして部室にて
すでにビールの入っている黒川先生を中心に盛大に卒業記念パーティーが繰り広げられる。
文化祭の後、打ち上げらしい事ひとつしなかった映研としては今日ここでその機会をもつに至ったのだ。
ここで部員たちの進路がそれぞれ描かれる。

まず外村ヒロシ。
全然勉強しているシーンが描かれなかったのに東大に合格を決めていた。
まったくもって意外性の男である。
さらには女性タレント限定の芸能プロダクションの設立まで視野に入っている。
結局。こいつの前髪が上がった姿は最後までなかった。
これで大草バリのいい男だったとかいうガチな設定もアリだったのにちょっと残念である。

次に北大路さつき。
その外村プロダクション専属タレント第一号としてスカウトされたのだが
さつきの親戚は京都で120年の歴史をもつ料亭を経営している。
だが後継者がいないという事でさつきが立候補し女将になるというのである。
小宮山と真中は浪人生活…。
だが浪人の件に関しては何もしゃべらない真中。

「けど角倉言ってたよ。
俺を頼りにしないところは少しだけ見込みあるって」
…最終話への伏線か?そして、仲間たちとも別れのときがせまっていた。
夕暮れに染まる校舎を眺めながら感慨にふける面々。

「あたし。これからやれることたくさん頑張っていくから
―真中くんもまた素敵な映画作ってね…」
あの別れの日以来東城は変わった。
もう、自信なさげで臆病だった東城はどこにもいない。
もちろんもう二度とおさげでメガネ姿にはならないんだろう…。

「もちろん! 待ってろよすぐ東城のとこまで追いついてみせるから」
「そのときはちゃんと東城先輩の原作で映画作ってくださいねっ!!」
「俺んとこの女優が主演で」
「映画の完成祝賀会。会場は北大路の料亭で決まりだな!」
「そしてまたみんなで会おう…!」
なんだよこの面々。
すげー楽しそうな別れのシーンじゃないかよっ…。
注さん何よりもこのシーンに感動してしまいました。
そして桜の花が散り行き、新緑の季節となった頃。
真中は工事現場で働いていた…。
心配する母親の意見を振り切る真中。

「一応自分なりに考えあるんだ。
迷惑かけねーからちょっとだけやりたいことやっていいかな…」
いよいよ次回で最終話です。
とうとうこのブログも今月の17日で一周年です。
とりあえずなんとしてでも全部書き上げて、ゆっくりしたい。
今回の話のなかに登場した東城の答辞を
全文想像して書き上げていただいたブログがありますので紹介いたします。
ねこぱんだのひとりごと 『泉坂高校の卒業式だから』ねこぱんださんの想像力にただただ脱帽。
こんな答辞聞かされたら映研のメンバーは涙を流すしかないです。
注さんもちょっとホロリとさせられました。
この記事の原作はこちらまで
いくら何でも夜更かししすぎた。