女装のためにあきらめたサッカー。
サッカーを捨てたことによって
筋肉のついていない二の腕と擦り傷のない膝を手に入れたのだけど
自分にとって一番大切なものはなんだろう。
前回なにげなくしでかしたチョンボは確実に亘の心を揺り動かしていた。
いつも水面と一緒にいる背の高い女の子。
ユキ。

「真剣なんだ。まじで惚れたかも」
そんな亘の本気な気持ちに
ふたりをあわせたいという水面の好奇心が勝り

ユキを紹介する手筈となった。
・・・。
・・・。
・・・。
二人きりの放課後の教室。
これだけ至近距離にもかかわらず
亘は自分の友人であるという事実に気付かないこの鈍感さ。
というよりここの住人はみんな視力が弱いのだろうか?
見ず知らずの男であればこっぴどく振ってしまうこともできた。
だが亘は中学以来の友人だ。
ユキは由紀であって男性である。
あくまで女装癖があるだけでノーマルなので交際することはできない。
いっそ正体をバラしてしまえば話は早いだろう。
だが。
しかし。亘と友達をやめたくはない・・・。
そこでユキは亘にとって一番痛い言葉を投げかける。

「サッカー辞めてくれる? そうしたらあなたとつき合ってもいい」

「私が欲しいなら、他の物は全部棄ててくれなきゃ嫌」
実はこの言葉に一番反応したのが水面。
おもわず「怖い人ね」と本音が漏れるほど。
サッカーと女装を天秤にかけた際に由紀は女装を選んだ。
亘は由紀よりサッカーが下手だったけど、練習を重ね今の位置にいる。
この、亘に対するある種の嫉妬心のような痛い言葉。
だが、亘とて簡単にサッカーを辞めてしまうような男ではない。
痛いであろう言葉を投げかけたものの
今回の亘の告白は平行線で終わることとなる。

だが、亘の中にはユキが住み続けているのである。
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